デリーは、古代には「マハーバーラタ」に現れる神話の王都、中世のイスラム諸王朝からムガル帝国までの「七度の都」の時を経て現代インドの首都となった。
10月1日の日経新聞の一面に「アジアの大都市圏で交通渋滞が深刻、対策を急ぐ」との記事。渋滞による経済損失はアジア新興国の国内総生産の2〜5%、さらに大気汚染も「世界最悪」であるという。
滞在中は、天候があまり良くなかったせいか大気汚染はさほど気にはならなかった。しかし、交通渋滞は想像を絶する。マナー、クラクションの騒音、日本の整然とした交通渋滞とは全く異なる。インド独特の文化なのだろう。車は傷だらけ、接触事故は日常茶飯事といったところ・・・(喧嘩のような争いごとはないのが不思議


向かう途中の道路状況(二車線が三車線状体)
小型車が主流(日本のスズキ車が多い)
車両の間隔が半端でない!
クトゥブ・ミーナールは、1993年に世界遺産に登録されたモスクの塔と取り巻く建築物郡である。
インド最初のイスラム王朝がヒンズー教徒に対する勝利を記念して建てたもので、高さ72.5m、5層からなり、直径は基部が14.3m、頂部は2.7mと上部に行くにしたがって細くなっている。下3層は赤砂岩、上2層は大理石と砂岩で造られている。


コーランの章句を図案化したものが刻まれている。
ミーナールのすぐ脇には、破壊されたヒンズー寺院やジャイナ寺院の石材を使ったインド最古のモスク「クワットゥル・イスラム・マスジット」がある。


高さ7mの鉄柱(3〜4世紀に造られ、サンスクリット語の文字が刻まれている。
鉄の純度は100%近く、いまだに錆びていない)
後方の石造りの回廊は、破壊された寺院の石材を転用したもので、ヒンズー教の彫刻の跡が残っている。また、異教徒が使用したため上下逆になっている石もあり、ひとつひとつが興味深い。

破壊された寺院(刻まれた模様が素晴らしい)


ヒンズー彫刻やブッダ彫刻の石を再利用したモスクの石柱

未完のアラーイの塔(クトゥブの2倍の高さの塔を建てようとして
着工したが、途中で暗殺され、完成に至らなかった。)
多宗教国家の歴史が刻まれた世界遺産である。
次に向かったところは、アーグラー。
インド最速列車「ガディマン・エクスプレス」に乗って2時間弱、デリーからヤムナー河沿いに約200km下った所にある地方都市。その歴史は古く、紀元前3世紀に都市として登場、16世紀にムガル帝国第3代皇帝が首都をおき、隆盛する帝国の中心として繁栄した。そして、世界で最も美しい建築物タージ・マハルがある場所である。

タージマハルの正門。
ここを潜ると300m四方の庭園と泉を前景にした
シンメトリックなタージマハルが現れる。

完全左右対称のタージマハル。
囲む4本のミナレットは、礼拝の呼びかけをするための塔(1本は清掃中)、決してタージマハルに向かって倒壊しない造りになっている。
タージマハルは、ムガル帝国第5代皇帝シャー・ジャージ・マハルの妃ムムターズ・マハルの墓である。世界各地から貴石が取り寄せられ、職人を集め、22年の歳月と天文学的な費用をかけて1653年に完成させた。さらに、ヤムナー河の対岸に、黒大理石で自分の墓を建て、両者を橋で結ぶ計画をしたが現世の権力はなく息子に対岸のアーグラー城に幽閉されてしまう。

綺麗な大理石、刻まれた模様、埋め込まれた貴石の数々、目の当たりにして美しさ・大きさと建築技術の偉大さに胸を打たれた。
これより中へは、裸足か靴にカバーを付けて入る。(素足で大理石の実感を味わいながら見学するのも良い)

ドームの中央に、皇帝シャー・ジャージ・マハルと妃ムムターズ・マハルの二つ棺が安置されている。装飾は極めを超えている。



柱は凸凹に見えるが、実は錯覚。
下の写真のような模様で実は平面。


タージマハルから見た入口のモスク

モスクの回廊

モスクの回廊(赤砂岩で造られている)
タージマハルは、朝陽の昇る時刻には刻々と変わる白大理石の色あいが素晴らしいとのこと。また、満月の夜の青白い月光に照らし出されたあやしい美しさも現生にはないようなすご味を感じさせるという。是非、見たいものである。
アーグラー城は、ムガル帝国の権力の象徴。シャー・ジャージ・マハルは対岸のタージ・マハルをここのムサンマン・ブルジュ(囚われの塔)に幽閉され眺めながら74歳で息を引き取った。
デリーからアーグラーへ遷都した皇帝アクバルが1565年に着工して1573年に完成し、シャー・ジャージ・マハルまで3代の居城となる。4代目のアウラングゼーブが父を城塞内の「囚われの塔」に霊閉してデリーに移る。
濠を渡り、門を入ると宮殿が並ぶ。

城の南側のアマル・スイン門

濠を巡らす城壁(難攻不落の城である)

ジャハーンギル宮殿

庭園の中央に大きな皇帝の浴槽が置いてあった。
入浴シーンが想像もつかない。

細かい文様が刻まれている。

石は大きく頑丈な治具で固定されている。

大理石で造られた豪華な宮殿


幽閉されていた「囚われの塔」、対岸にはタージマハルが望める。

貴賓見の間(黄色い枠に王座がある)
王座の後方にタージマハルが見える。
インド文化の壮大さが伝わりましたでしょうか・・・
あまりにもスケールが大きくカメラに収まらない。そんな世界遺産でした。
第3弾でバナーラス・聖河ガンガーとガートをお送りします。